ラーニングピラミッドとは?メリット・英語学習への活かし方を紹介!
文部科学省の「学校教育情報化の現状」では、OECD加盟国等48カ国・地域と日本の教員の「各指導実践をどのくらい頻繁に行っているか」の割合が判明しました。
以下のデータから読み取れるように、日本の中学校教員はOECD参加国の中学校教員に比べて、各指導を頻繁に行っていないことがわかります。
出典元:文部科学省の「学校教育情報化の現状」
しかし、各項目にある問題解決能力を養ったり、グループ討論を行ったりする学習指導は、ラーニングピラミッドで解決できます。
そこで今回は、教育関係の仕事をしていて指導に熱を入れたい方に向けて、ラーニングピラミッドのメリットや具体例を紹介します。
ラーニングピラミッドとは何か?
教育現場でよく耳にする「ラーニングピラミッド」。そもそもどうして注目されるようになったのでしょうか。ここからは、ラーニングピラミッドのメリットやアクティブラーングとの違いを踏まえて、ラーニングピラミッドを紹介します。
ラーニングピラミッドとは
学習方法と平均学習定着率の関係は、構図で表すことができるとアメリカ国立公園研究所によって提言されており、その構図を「ラーニングピラミッド」と言います。
ラーニングピラミッドでは、インプット学習とアウトプット学習に大別された以下の7つの学習法を順番に行います。以下が7つに大別された学習法です。
- 講義
- 読書
- 視聴覚
- デモンストレーション
- グループ討論
- 自ら体験する
- 他の人に教える
上記の学習法のうち「1」~「4」はインプット学習、「5」~「7」はアウトプット学習です。そして、以下がラーニングピラミッドの構図です。
出典元:キャリア教育ラボーラーニングピラミッド
なぜラーニングピラミッドが注目されるようになったのか?
ラーニングピラミッドが注目されるようになった理由は、文部科学省が提言する学習指導要領改訂にあります。学習指導要領改訂では、「主体的・対話的で深い学び」ならびに、アクティブラーニング(能動的学習)が紹介されています。
アクティブラーニングは、「一方向的な知識伝達型講義で学ぶ(受動的)学習を乗り越える意味での、あらゆる能動的な学習」です。
受動的な学習を乗り越えるための能動的な学習とは、「書く・話す・発表する」などの活動への関与を指します。
「書く・話す・発表する」などの能動的な学習において、ラーニングピラミッドの「グループ討論・自ら体験する・他の人に教える」などが関連づけられ、効果が高いのではないかと注目されるようになったのです。
ラーニングピラミッドにエビデンスや根拠はあるの?
ラーニングピラミッドは、文部科学省が提唱した学習指導要領改訂によって注目を浴びましたが、根拠やエビデンスがないとの声もあります。
南山大学人文学部心理人間学科 講師「土屋耕治」さんは、「ラーニングピラミッドの誤謬――モデルの変遷と“神話”の終焉へ向けて」の論文で、ラーニングピラミッドのエビデンスの無さを指摘しています。
土屋さんによると、ラーニングピラミッドの図や数値は別々の文脈で用いられており、どこかで組み合わされているとのこと。階層の内容も順序も変化しているのにも関わらず、あたかも何かの調査に基づくかのように用いられているそうです。
具体的には、「学習方略に関していくつかの枠組みに分けられるDaleによる分類」と「モンテッソーリ法の中にある蔵言」が組み合わされています。
箴言とは、1913年の記事にある「私たちは10聞いたうち2しか覚えていない。私たちは10見たうち5を覚え、10触ったうち7を覚え、10行なったうち9を覚える」の言葉です。
上記のラーニングピラミッドの図で割合が写し出されていますが、土屋さんの論文から考えると信憑性がないと言えます。
また、各学習項目の信憑性がないにも関わらず、使用してしまう事による悪影響があります。
「教える」という方略が学習者の都合の良いように解釈されているのです。今では、全く根拠がないにも関わらず、「教えることが良い」と過度に強調されているためさまざまな問題が起きています。
不当に講義の時間が減らされたり、学生がこのモデルを信じてしまうと講義や読書を通して学ぶモチベーションが減ったりしてしまう影響です。
ラーニングピラミッドを指導に導入する場合は、全てを鵜呑みにせず、生徒・児童に合わせて改善していくことが大切です。
参考元:ラーニングピラミッドの誤謬(土屋耕治)ー医学界新聞
ラーニングピラミッドのメリット
ラーニングピラミッドのメリットは、学習者の「能動性」を育てられる点。
グループディスカッションや実演などを通して、自ら考えて行動する能動性を鍛えられるからです。
また、教養、知識、経験などの汎用的能力をバランス良く身に付けられるのもメリットです。
ラーニングピラミッドの内容を見てみよう!
ここからは、ラーニングピラミッドの内容を細かく紹介します。ピラミッドの内容を把握して、効率の良い指導を提供しましょう。
講義(学習定着率:5%)
ピラミッドの1番上には、「講義」があります。聞くだけの講義で学習したことの定着率は5%程と言われています。
講義は、講師が生徒に向かって指導する授業です。
学校や集団指導塾で一番多く使われている指導方法ですが、講義は受動的に知識を得るだけなので、「効率的な学習方法ではない」とされています。
参考元:キャリア教育ラボー平均学習定着率が向上する「ラーニングピラミッド」とは?
視聴覚(学習定着率:10%)
講義の後は、参考書の付録DVDや学習内容に関連したテレビ・ラジオ番組などを視聴します。視聴覚の学習定着率の割合は10%程です。
単なる文字の羅列や静止画に比べて、動画や音声はより多大なインパクトを与えます。ただし、何となく聞き流す時間にするのではなく、視聴覚の時間でも覚えてもらうために、メモ用紙や感想用紙を用意して集中してもらえる工夫をしましょう。
参考元:キャリア教育ラボー平均学習定着率が向上する「ラーニングピラミッド」とは?
実演によるデモンストレーション(学習定着率:20%)
実演によるデモンストレーションとは、「先生が行う実験を見る」「工場見学に行く」などが当てはまります。学習定着率の割合は20%程度です。
デモンストレーションは、わからないことがあればその場で質問できるメリットがあります。
参考元:キャリア教育ラボー平均学習定着率が向上する「ラーニングピラミッド」とは?
グループディスカッション(学習定着率:30%)
グループディスカッションは、グループ内でひとつの議題に対して話し合うディスカッションや、あらかじめ決められた順番・内容・役割に従って発言するディベートなどを指します。学習定着率の割合は30%と言われています。
グループディスカッションは、論理立てて話をする練習や他者の意見から新しい視点を得られるメリットがあります。
参考元:キャリア教育ラボー平均学習定着率が向上する「ラーニングピラミッド」とは?
実演による経験・体験・練習(学習定着率:75%)
実演による経験・体験・練習は、体育・美術・家庭科などの実技科目での、実際に自分の手や体を動かして感覚をつかむことを指します。学習定着率の割合は約75%です。
現場に出向いて自分で調査を行うフィールドワークも含まれます。
参考元:キャリア教育ラボー平均学習定着率が向上する「ラーニングピラミッド」とは?
誰かに教える(学習定着率:90%)
誰かに教えることは、調査発表や研究発表などが当てはまります。学習定着率は90%程と、一番高い値です。
理由は、他人に物事を教えるためには、自分でしっかりと理解していなければならないため、生徒・児童は物事を噛み砕いて、基礎的な部分から理解しようと努めるからです。
ここまでご紹介したように、ラーニングピラミッドで学習定着率を高めるには、ピラミッド下の学習法ほど効果的と言えます。ただし、ピラミッド上の講義・自主学習で知識を深めることが前提になります。
参考元:キャリア教育ラボー平均学習定着率が向上する「ラーニングピラミッド」とは?
ラーニングピラミッドを英語学習に活かす方法をご紹介!
ラーニングピラミッドを英語学習に活かすにはさまざまな方法がありますが、おすすめは「他の人に教えるつもりで要点をノートにまとめる」です。
他者に教える行為は、学習定着率が一番高いとされていますが、生徒の横に今すぐに教えられる友人や講師がいるとは限りません。
学習塾でも、他者に教える行為をひとりひとり作るのは、時間がかかりすぎてしまいます。
そこで、他者に教えるつもりでノートにまとめてもらえば、話す時よりも論理的に見やすくわかりやすく書こうと意識して生徒の理解力も上がるのです。
ノートは最後にクラス全体で回収して、良く出来た子のノートを紹介すれば、デモンストレーションにもつながります。
まとめ
今回は、教育関係の仕事をしていて指導に熱を入れたい方に向けて、ラーニングピラミッドのメリットや具体例を紹介しました。
ラーニングピラミッドは、エビデンスの薄さが懸念されるものの、能動性、教養、経験、知識などさまざまな能力を育てられるメリットがあります。
しかし、自由度の高い教育現場でないと「ラーニングピラミッド」を導入できないのは確かでしょう。日本の教育現場や学習塾では、カリキュラムが決まっていて、ディスカッションや他者に教える時間などを取り入れにくいからです。
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