主体的・対話的で深い学びとは?授業改善のポイントや具体例をご紹介!
文部科学省・国立教育政策研究所「国際数学・理科教育動向調査(TIMSS2015)のポイント」が発表した、「国際数学・理科教育動向調査」の結果では、小学校、中学校ともに、前回調査に比べ「算数・数学、理科の平均得点が有意に上昇している」ことがわかりました。
出典元:
新しい学習指導要領の考え方 -中央教育審議会における議論から改訂そして実施へ文部科学省
調査では、2003年以降550点未満の生徒・児童の割合が減少し、550点以上の生徒・児童の数が増加したとの発表もあります。
これらの日本の子ども達の学習能力の向上は、学習指導要領の改善の効果もひとつの理由ではないかと考えられています。そのため、学習指導要領の学習法を授業に取り入れることで、より子ども達の理解度を高められる指導ができるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、学習指導要領の理解をより深めたい方に向けて、主体的・対話的で深い学びの6則や学習理論、授業改善のポイントなどを紹介します。
主体的・対話的で深い学びとは?簡単に説明!
主体的・対話的で深い学びは、学習指導要領の改訂とともに出てきた新しい指導法です。ここからは、主体的・対話的で深い学びをわかりやすく解説します。
主体的・対話的で深い学びの6則を理解しよう
埼玉県教育委員会は、主体的・対話的で深い学びを実現するために「主体的・対話的で深い学びの実現6則」を提唱しました。
以下6つの原則について詳しく見ていきましょう。
1. 主体的・対話的で深い学びとは
主体的・対話的で深い学びは「主体的」「対話的」「深い」の3つに分けられます。以下解説です。
1. 主体的な学び:生徒・児童自身が学習活動を見通し、振り返り、課題を解決していこうとすること
2. 対話的な学び:他者と協働し学び合いをすることによって、自身の考えを広げ
深めること
3. 深い学び:生徒・児童の物の見方・考え方を促進させて、理解力や思考力をあげること
参考元:主体的・対話的で深い学びの実現 6則ー埼玉県教育委員会
2.何のために主体的・対話的で深い学びを実現するか
子供達の資質・能力を育成するために、主体的・対話的で深い学びを実現します。
そのために、学習内容を明確にし、講師は子ども達にどんな学びの過程がふさわしいのかを見極めることが必要です。
参考元:
主体的・対話的で深い学びの実現 6則ー埼玉県教育委員会
3.学習過程を考え直す
子供たちの、資質・能力を身に付けるために、特に、学習過程を見直して、指導の質を高めることが大切です。
学習過程を見直すポイントは、子供達の興味・関心、課題等を明確にすることです。個性に応じた学びを引き出していくと、指導改善につながります。
参考元:
主体的・対話的で深い学びの実現 6則ー埼玉県教育委員会
4. 子ども達の変容(伸び)を見とる
次に、子ども達は指導過程を変えることで何ができるようになるのか「変容(伸び)」を考えましょう。
子ども達も、講師も、成長や変化を実感しないと改善する意味がありません。どのくらいの期間で、どれくらい成長できたか記録しておきましょう。
参考元:主体的・対話的で深い学びの実現 6則ー埼玉県教育委員会
5.信頼関係がある学級を作る
主体的・対話的で深い学びの実現を目指しつつ、学級で信頼関係を作ることが大切です。
学級での人間関係を良好にし、子ども達のコミュニケーション能力を高めることで、各教科等の授業において主体的・対話的で深い学びの実現につながるからです。
また、学級は、子供達が日々生活する基礎的な場所です。学習活動や学校生活の基盤と なることから、子供達との信頼関係および子供達同士の好ましい人 間関係が重要になるのです。
参考元:
主体的・対話的で深い学びの実現 6則ー埼玉県教育委員会
6.授業改善を続ける
講師が主体的・対話的で深い学びを実現するために、講師同士で授業改善を目指して変容することが大切であると提唱されています。
講師同士で現状を分析し、まずは改善できるところから始めましょう。 指導に「これで良い」という正答はひとつではありません。常に子供達のために授業を改善していく姿勢を持ちましょう。
参考元:
主体的・対話的で深い学びの実現 6則ー埼玉県教育委員会
主体的・対話的な深い学びと学習理論
主体的・対話的で深い学びを指導で実践する前に、学習理論を理解する必要があります。そもそもの学習理論を知らないと、間違った指導法を行ってしまう場合があるからです。
主体的・対話的な深い学びの学習理論は以下になります。
人が「 学ぶ」行為は、古くからさまざまな領域で研究がなされてきました。中でも、教授と学習の概念は、一般的に「教育者の行う教授活動」と、「学習者 の行う学習活動」で理解されています。
.しかし、実際の教育では、 教授と無関係に成り立っている学習もあれば、教授が学習指導を導けない場合もあるのが事実です。
また、教師からいかなる指示も影響も受けずに学習者のみで学習を行う場合や、教師から前もってもらう指示のもと、ひとりで学習する場合もあります。
.さらに、教師の指示には従わずに学習する方法もあります。
つまり、現実の教育の場においては、教授と学習者は必ずしもひとつの教育過程を構成しているとは断言できないのです。
しかし、岐阜女子大学久世均教授は「 学習の理論とは、一定 の教材を教師が教授し、学習者がその教授のもとで学習する活動を言い表す 概念である」と提唱しています。
そのため、主体的・対話的で深い学びにおいても、教授と学習者は一体化して行わなければなりません。
参考元:
第2講 主体的・対話的な深い学びと学習理論 久世 均(岐阜女子大学)
【文部科学省が提唱】主体的・対話的視点の授業改善
主体的・対話的視点の授業改善は、アクティブラーニングの基本的な考えが根本にあります。以下ではアクティブラーニングの考えを踏まえながら、主体的・対話的で深い学びの実現に必要なことや授業で大切なポイントを解説します。
新指導要領で目指すこと
主体的・対話的視点の授業改善を行うには、まずは新学習指導要領の理解が必要です。
学習指導要領の改訂で、学習指導の方向性が変わり、主体的・対話的視点が注目されるようになったからです。
学習指導要領の改善では、以下の3つの資質・能力の育成と学習評価の充実が提唱されています。
- 学びを人生や社会に生かそうとする学びに向かう力の育成
- 生きて働く知識・技能の育成
- 未知の状況にも対応できる思考力・判断力・表現力等の育成
これらのことを実現するために「教科・科目等の新設や目標・内容の見直し」が行われています。具体的には、小学校の外国語教育の教科化、高校の新科目の新設などです。
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ポイントは、あくまで学習内容の削減は行わない点。
最後に、どのように学ぶかの視点で、「主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)の視点からの学習過程の改善」が提唱されています。
アクティブ・ラーニングの視点から学習改善を行うことで、子ども達の生きて働く知識・技能の習得など、新しい時代に求められる資質・能力を育成を目指していくのです。
マナリンク では、新学習指導要領について年代別にご紹介した記事がございます。新学習指導要領の3観点についても解説していますので、理解を深めたい方は「新学習指導要領は何が変わる?小学生・中学生・高校生【年代別】にご紹介」の記事をお読み下さい。
参考元:新しい学習指導要領の考え方 -中央教育審議会における議論から改訂そして実施へ文部科学省
アクティブラーニングを含む基礎的な考え
主体的・対話的視点の授業改善を実践するには、アクティブラーニングを含む基礎的な考えも理解する必要があります。アクティブ・ラーニングは、新しい時代に求 められる資質・能力を育成するために重要な役割を果たすからです。
平成 26 年11月、文部科学大臣が中央教育審議会に対して提唱した「初等中等教育 における教育課程の基準等の在り方について」から、アクティブ・ラーニングを見てみましょう。
講師は、ある事柄に関する知識の伝達だけに限らず、学ぶことと社会とのつながりをより意識した教育を行うことが大切です。子ども達は、学習プロセスを通じて、基礎的な知 識・技能を習得するとともに、自ら課題を発見する力を身につける必要があるからです。
解決に向けて主体的・協働的に探究し、実践に生かしていけるようにすることが重要とのこと。
そのために、課題の発見と解決に向けて主体的・協働的に学ぶ学習「アクティブ・ラーニング」を取り入れる必要があります。
アクティブ・ラーニングを含む学習・指導法は、知識・技能を定着させる上でも、学習意欲を高める上でも効果的であるとこれまでの実践の成果から 指摘されているのです。
参考元:
「主体的・対話的で深い学びとは」
授業で大切なポイント
授業で大切なポイントは、同じ物事であっても 教科ごとに多様な捉え方をする点です。理由は、子ども達が社会出てからも活かせる能力を育むため、より多様的に物事を考える視点が必要だからです。
例えば、「オリンピック・パラリンピックのメダルづくり」のテーマで考えてみると、以下のような多様な考えが挙げられます。
- 図工・美術:どんなデザインにするか
- 算数・数学:何枚必要で、いくらかかるか
- 理科:どんな性質の材料を使うか
- 技術・家庭:どう加工すればいつまでもきれいに保てるか
- 社会:どうすれば開催地の特徴を出せるか
このように各教科で多様的な考えの育成を意識すると、「これまで考えもしなかった視点に気づける」メリットがあります。
参考元:
主体的・対話的で深い学びの 視点からの授業改善ー文部科学省
主体的対話的で深い学びの授業の具体例を紹介!
ここからは、主体的・対話的で深い学びの授業として、「技術・家庭科」の具体例を紹介します。技術の授業で習得する材料と加工の技術によって、生活の問題を解決する場合の指導方法です。
授業内容
身の回りの生活用品で、何を改善したら使いやすくなるか考えさせる
主体的な学びの視点
講師は、生徒がどうしたら見通しをもって作業したり、 粘り強く考えたりすることができるか考える
具体的な手立て
- 使う人のニーズを確認させ、設計・ 制作することの大切さを確認してもらう
- 必要な作業手順を組み立ててもらう
- つまづいている生徒を励まし、修正の助言をする
- 問題の解決を振り返る場面を設ける
- 自らの学びの成果を自覚させる
このように、生徒・児童には、自分の学びの見通しを立てたり、振り返ったりして自ら考える力が必要になります。
生徒・児童が自ら考える力を養えるように、具体的な手立てを組んであげるのが講師の役目です。
参考元:
主体的・対話的で深い学びの 視点からの授業改善ー文部科学省
まとめ
この記事では、学習指導要領の理解をより深めたい方に向けて、主体的・対話的で深い学びの6則や学習理論、授業改善のポイントなどを紹介しました。
主体的・対話的で深い学びは、学習指導要領やアクティブ・ラーニングへの知見を深めることで、理解度が高まります。
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こちらの情報は執筆段階でのリサーチ・状況において執筆されたものであり、随時内容のメンテナンスを行っておりますが、 現時点での正確性を保証するものではございませんのでご了承いただけますと幸いです。