2022年から始まる!学習指導要領の改訂で高校授業はどう変わる?
新学習指導要領とは
「学習指導要領」とは、全国どこの学校でも一定の水準が保てるよう、文部科学省が定めている教育課程(カリキュラム)の基準です。およそ10年に1度、改訂しています。
子供たちの教科書や時間割は、これを基に作られています。
引用:文部科学省「学習指導要領」
学習指導要領は教育課程の基準なので、内容に沿った授業を行います。
学習指導要領は国公私立問わず適用されるので、全ての高校で従う必要があります。
教科書も学習指導要領に基づいて作成されているので、使用教材をベースに工夫した授業内容を作成しましょう。
新学習指導要領の基本的な狙いは、以下の3つです。
- 社会で求められる資質・能力とは何かを共有し、「社会に開かれた教育課程」を重視する
- 知識及び技能の習得・思考力・判断力・表現力などをバランスよく育成し、さらに知識の理解の質を更に高めて確かな学力を育成する
- 道徳教育・体験活動・健康に関する指導を充実させ、豊かな心や健やかな体を育成する
出典元:文部科学省「高等学校学習指導要領(平成 30 年告示)解説 総則編」2018年7月
学習指導要領が改訂された背景
近年、社会変化が激しく、子どもたちを取り巻く環境が大きく変わっています。
少子高齢化、グローバル化、ICTなどの技術革新などに適応するように作成された学習カリキュラムが、改訂された学習指導要領です。
また、選挙権年齢や成年年齢が18歳に引き下げられることから、政治や社会は高校生にとって身近なものになります。今回の学習指導要領は、積極的に国家・社会形成に参加できる教育内容となっています。
新学習指導要領で重視される3つのポイント
新学習指導要領は、大きな環境変化の中で生きる子どもたちに向けて作られています。
新学習指導要領で重視されているのは、以下の3つです。
- 何を学ぶか
- どのように学ぶか
- 何ができるようになるか
ここからは、3つのポイントと具体例について解説します。
何を学ぶか
新学習指導要領は、新しい時代に必要な資質・能力を踏まえて科目新設や内容見直しを行っています。高校では「公共」「理数」科目が新設されました。
小学校・中学校・高等学校ともに、学習内容の削減は行っていません。
どのように学ぶか
知識の内容だけでなく、どのように学ぶかという過程も重視しているのが、今回の学習指導要領の大きなポイントです。
主体的・対話的に深い学びを得る「アクティブ・ラーニング」の視点で学習を進めます。
ただ知識を得るだけでなく、授業内で意見を出し合う、話し合う時間を設けることが必要です。
グループで考えて発表することで、周りの人たちと共に考え、新しい発見や豊かな発想が生まれます。担当教員は、生徒たちが主体的に対話できる授業を作る必要があります。
何ができるようになるか
質の高い知識を過程を重視しながら学ぶほか、何ができるようになるかという視点も重要です。
文部科学省は、学校教育の内容をよりよくすることで、よりよい社会が創られると述べています。
社会生活に活かせるスキルを身に付けるためには、以下の3つの力をバランスよく育むことが必要です。
- 学んだことを人生や社会に生かそうとする学びに向かう力、人間性
- 実際の社会や生活で生きて働く知識及び技能
- 未知の状況にも対応できる思考力、判断力、表現力
出典元:文部科学省「学習指導要領」
新学習指導要領で大きく変わる科目と変更点
新学習指導要領で大きく変わる科目を表にまとめ、ポイントについて解説します。
出典元:文部科学省「新高等学校学習指導要領と学習評価の改善について」
国語
国語の科目は、今回の学習指導要領改訂で大きく変わりました。
必修科目となった現代の国語は、実社会・実生活に密着した論理的な文章について学びます。現代の国語は、読み書きだけでなく、授業内容に対話を盛り込んだ内容です。思考力・判断力・表現力を養うことを目的としています。
同じく必修科目の言語文化では、小説・随筆・韻文・古文・漢文などの文学的な文章の読み書きを学びます。
論理国語は近代以降の評論文、文学国語は近代以降の文学的文章・翻訳された文章・古典の文学作品などを学びます。どちらも読み書きを中心とした内容です。
古典探究は、改訂前の国語表現と古典Bをベースとしています。古典作品の語句や文章構成、表現の特色などを学ぶほか、古典作品を読み比べて発表したり、和歌・俳諧・漢詩を創作するなどの授業が行われます。
社会
社会は地理歴史と公民に分けて説明します。
地理歴史
地理歴史は、大幅な科目改訂が行われました。必修科目は地理総合と歴史総合となり、発展的な学習科目として「地理探求」「日本史探求」「世界史探求」が新設。
歴史総合では、特に近現代史を重視し、日本史と世界史を学ぶ内容です。現代の日本・世界が抱える問題を解決するために歴史を学ぶ必要があるためです。
改訂前に選択科目だった地理は、地理総合として必修科目となりました。地理総合では「地図」「地球的課題」「防災」の3つの柱を立て、現代社会の課題解決に向けた学習内容となっています。
公民
公民では「現代社会」がなくなり、「公共」が必修科目として新設されました。
公共は、現代社会の学習内容をベースとしています。さらに情報を調べてまとめる能力や、平和で民主的な社会形成に必要な課題解決力を身に付ける学習内容です。
公共の授業では、生徒同士で意見交換を行う対話式の授業が含まれます。
また、選挙権年齢が18歳に引き下げられたことを受けて、主権者教育を行うことも公共の授業内容となりました。
英語
今回の学習指導要領改訂により、外国語教育の抜本的な強化が進められています。
学習指導要領改訂前は、高校卒業までに3,000語程度の英単語を学習していました。改定後は4,000~5,000語程度へ増加しています。
「英語コミュニケーション」では、以下の5種類の技能をバランスよく育成するために文法や長文読解などを学びます。
- 聞く
- 読む
- 話す(やり取り)
- 話す(発表する)
- 書く
「論理・表現」ではプレゼンやディベートを通して英語での発信力を鍛えます。
情報
情報Ⅰ・Ⅱは、データやAIを使いこなす能力を養うための科目です。コンピュータや情報通信ネットワークの仕組みを理解し、安全に使うための情報セキュリティについても学びます。
また、情報の授業内容には、プログラミングに関するものが多く含まれています。
理数
理数は新設科目で、どちらも選択科目となります。
数学・理科の探究を行い、研究発表を行います。課題は生徒自身が設定することがポイントです。
大学入学共通テストはどう変わっていく?
学習指導要領が改訂されたことで、大学入学共通テストの内容はどのように変わるのでしょうか。
令和7年度以降、大学入学共通テストは国語・地理歴史・公民・数学・理科・外国語・情報の7教科が出題対象となります。
出典元:独立行政法人大学入試センター「平成 30 年告示高等学校学習指導要領に対応した
令和7年度大学入学共通テストからの出題教科・科目について 」2021年3月24日
新たに対策すべきこと
令和7年度以降の大学入学共通テストで新たに出題科目となる情報科目の対策が重要です。
試験時間は60分。出題範囲は必修科目である「情報Ⅰ」で、コンピュータの仕組みやプログラミングなどの内容となります。
大学入試センターは、情報科目のサンプル問題を提供しています。具体的な出題内容は、以下の通りです。
- 小問群
- コンピュータとプログラミング
- 情報通信ネットワークとデータの活用
ただし、このサンプル問題は現在検討中の内容となります。令和7年度の大学入学共通テストまでに内容や出題形式が変更になる可能性があるので、注意が必要です。
新学習指導要領で教員の負担が増大?
新学習指導要領の実施で、ほとんどの科目が従来から変更となります。
現場の教員は、教材やカリキュラムなどの見直しに追われているのです。
また、新学習指導要領は知識の習得だけでなく、話し合いや問題解決など工夫した授業展開が必要です。他教科との連携も必要とされており、教員の労働時間はさらに増えています。
コマ数が増えることで非常勤講師の需要が増える?
新学習指導要領の実施に伴い、非常勤講師の需要が増えています。
特に情報科目の改訂で、プログラミングやネットワークに関する高度な知識を持つ情報化教員が必要です。さらに情報は入試科目にも追加されるので、重視されています。
しかし情報の単位数は少ないので、非常勤講師で賄う高校も多いのが現状です。
情報科目以外でも、非常勤講師の需要は高まっています。学習指導要領の改訂により、他科目の授業のコマ数が増加しているからです。
教育現場の変化に対応するために、非常勤講師の採用は今後も増加すると考えられます。
非常勤講師として働く方におすすめのオンライン家庭教師
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新学習指導要領の実施で、学校教員や生徒はカリキュラムの変化についていくのが大変です。
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