実務家教員になるには?必要な資格やスキル・研修プログラムについて紹介
実務家教員とは?
実務家教員とは、公式の定義はありませんが、一般的に「企業・官公庁などの実務経験で培われた知識・スキルを活かして高等教育機関の教団に立つ教員」を意味します。
高等教育機関とは、大学及び大学院(専門職大学及び専門職大学院を含む)、短期大学(専門職短期大学を含む)、高等専門学校、又は専門学校のことです。
出典元:文部科学省「持続的な産学共同人材育成システム構築事業」
2019年度に新規採用された大学教員の、採用前の状況について表にまとめました。
出典元:文部科学省「学校教員統計調査-令和元年度(確定値)結果の概要-」2021年3月25日
https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kyouin/kekka/k_detail/1395309_00001.htm
民間企業から採用された人は10%ほどとなっています。
今回の統計調査では本採用の大学教員ですが、今後は企業勤務と兼任する教員も増えると予想されています。
企業で実務経験を積んだ実務家教員は、多様な働き方ができるといえます。
実務家教員が生まれた背景
日本は、欧米と比べて大学などの教育機関と企業の連携が低いことが課題でした。
これを受けて、国は2019年に産学連携のために実務家教員の育成に力を入れることを宣言しました。教育機関と企業の共同教育の場を作るとともに、社会人の学びなおしの場も提供しています。
令和元年度から令和5年度までを事業期間とし、実務家教員の人材育成に取り組む計画です。
具体的な取り組み内容は、以下の4つです。
- 実務家教員育成プログラムの開発・実施
- 研修プログラムの標準化・全国展開
- 人材エージェントの仕組みを構築
- 企業と大学の連携体制の構築・強化
出典元:文部科学省「持続的な産学共同人材育成システム構築事業委員会」2021年12月
人材エージェントは、実務家教員を養成する研修プログラムの修了者が対象です。マッチングシステムに登録した実務家教員候補者を大学などに推薦して、マッチングを行います。
企業と大学を連携させるために、プログラムの共同開発や実務家教員の企業研修などが実施されています。
多様な社会課題に対応できる人材育成のために、スキルを持った実務家教員の活躍が期待されているのです。
実務家教員になるには
実務家教員になるためには、何が必要なのでしょうか。
ここからは実務家教員の必要資格やスキル、研修プログラムについて解説します。
実務家教員の必要資格
実務家教員になるために、決められた資格はありません。
実務経験は概ね5年以上とされており、30~40代の若手実務家教員も必要とされています。
資格は不要とのことですが、修士・博士学位を取得して論文を書いていると、採用の際に有利ともいわれています。もし当てはまる場合は、実務家教員に応募する際にアピールしましょう。
実務家教員になるための年齢制限はありません。しかし大学では定年を定めていることが多いので、募集要項の確認が必要です。
実務家教員は、企業での勤務を継続しながらの兼任も可能です。企業と大学、両方の職場で同時に働くことで、現場の生の声を発信できます。
実務家教員に必要なスキル
実務家教員に必要なスキルは、主に以下の3つの能力です。
- 実務経験
- 教育指導能力
- 研究能力
教員としての能力を向上させるために、文部科学省は実務家教員研修プログラムを用意しています。
実務家教員を目指す人の研修プログラム
文部科学省の「持続的な産学共同人材育成システム構築事業」に選定された18の大学等が提供しています。
対象は実務経験を有し、大学(専門職大学を含む)、短期大学(専門職短期大学を含む)、高等専門学校、専門学校等、高等教育機関の教員を目指す人です。各プログラムの修了者には証明書が発行されます。
研修プログラムを受講することで、講義計画の策定方法や、どのように授業展開をすればいいのか、などの実践的な知識が身につきます。
研修プログラムは、以下の4種類に分けられます。
- 産学連携教育イノベーター育成プログラム
- 進化型実務家教員養成プログラム
- 実務家教員養成課程
- 実務家教員育成研修プログラム
ここからは、それぞれの研修プログラムの内容や費用について紹介します。
<h4>産学連携教育イノベーター育成プログラム
産学連携教育イノベーター育成プログラムでは、産業界の知見と教育実践力を併せ持つハイブリッド人材の育成をめざしています。
東北大学・熊本大学・大阪公立大学・立教大学の4大学で受講できます。
授業内容は、全受講者共通の「大学大学教育基礎力科目」「汎用的教育実践力科目」「教育イノベーター実践演習科目」の他、選択制の専門領域別科目コース別必修科目と選択科目です。
応募資格は、以下の両方を満たすことです。
- 大学を卒業した者又はこれと同等以上の学力があると認められている
- 原則として専門的技術的又は管理的な職務において5年以上の実務経験を有する
入学金は不要で、受講料は300,000円です。
<h4>進化型実務家教員養成プログラム
進化型実務家教員養成プログラムでは、社会変動に伴う諸課題に多職種連携で対応できる高度専門人材の育成をめざしています。
名古屋市立大学・岐阜薬科大学・高知県立大学・中京大学の4大学で受講できます。
コースは全受講生必修の「基本コース」と選択制の「専門コース」に分けられます。
基本コースでは、e-ラーニングとスクリーニング学習を併用して、実務家教員に必要な基礎能力を習得します。
より専門的な知識を身につけられる専門コースは、以下の4種類に分けられます。
- 経営実務コース
- 減災・医療コース
- 心理カウンセリングコース
- スポーツ実務コース
受講するコースによって費用は異なり、2022年度の基本コースの受講料は、名古屋市住民等142,600円(その他の者152,600円)となっています。また、別途演習実費がかかる見込みです。
<h4>実務家教員養成課程
実務家教員養成課程は、大学などの高等教育機関だけでなく、専門学校や人材育成会社、企業内大学などで活躍する人材の育成をめざします。
社会情報大学院大学・日本女子大学・武蔵野大学・事業構想大学院大学の4大学で受講できます。
実務家教員に必要な実務能力・研究能力・教育指導力に関する知識を網羅した受講内容で、実務家教員として働くための基盤作りが可能です。
受講にあたって必要な資格や実務経験の制限はありません。
以下に当てはまる人を募集対象としています。
- 実務経験を活かして、大学教員(実務家教員)を目指している
- 実務経験を活かして、研修講師を目指している
- 実務家教員として教育・指導力を強化したい
- 研修講師としてカリキュラムそのものや研修効果を改善していきたい
費用は350,000円です。
<h4>実務家教員育成研修プログラム
実務家教員育成研修プログラムは、高専におけるインフラメンテナンス分野のリカレント教育を担う人材の育成をめざします。
舞鶴工業高等専門学校・福島工業高等専門学校・長岡工業高等専門学校・福井工業高等専門学校・香川高等専門学校・放送大学の6機関で受講できます。
プログラムは約8カ月、月1回(土曜日)の講習会と、事前学習のe-ラーニング受講が基本です。
応募資格は以下のとおりです。
- インフラメンテナンス分野のリカレント教育を担う実務家教員を目指す者
- 建設技術者として培った実務経験や技術力を体系化し,次世代に継承したいと考える者
※ただし、技術士または技術士相当の資格を有し、インフラメンテナンスに関する高度な実務能力と相当の実務経験を有する者であること。
費用は110,000円と安価です。これは、2022年度に文部科学省補助金を充当していることが理由で、費用については今後変更する可能性があります。
実務家教員の採用・募集状況
実務家教員の正確な人数統計は出ていませんが、産業界から大学教員になる人数は年間約1,500~2,000人といわれています。
出典元:文部科学省「大学等における実務家教員の採用に関する調査」2022年3月28日
大学などが実務家教員を募集する方法は、主に以下の4つです。
- 文部科学省のウェブサイトの利用
- 一般向けの転職サイトなどの利用
- 学校関係者の縁故採用
- 学校から連携企業への依頼
研修プログラムを受講しても、自動的に採用が決まるわけではありません。大学等で教員になりたい旨を周囲にアピールした上で、自分から積極的に動くことが必要です。
文部科学省が提供する実務家教員マッチングサイトもあるので、利用するといいでしょう。
文部科学省のマッチングサイトは、実務家教員育成の研修プログラムの修了者が登録できます。現在の実務家教員登録者は約330名となっています。
実務家教員がプロフィールを登録すると、大学などから直接オファーがくる仕組みです。大学などの求人公募情報も確認できるので、気になる学校があれば自分から応募できます。
実務家教員として働く人の実例
ここからは、実際に実務家教員として働く人の経緯や、重要視しているポイントについて紹介します。
実務家教員として働く人の中には、大学の非常勤講師を数年間務めた人もいます。
本業の傍ら、地域課題の解決に向けた市民団体の活動が評価されて、実務家教員として採用された人も。企業での勤務経験以外も採用のきっかけになりえます。
また、実際に実務家教員として働く人は、大学院で修士課程を取得して論文を書いている人が多いです。専門的に学びたいことがある場合や、確実に実務家教員として働きたい場合は大学院への進学も視野に入れましょう。
実務家教員として働く1番のメリットは、未来ある学生の力になれる喜びでしょう。
社会人経験のある実務家教員は、自分の得意な教育法を実践して学生に指導する立場です。企業経験や研究論文はもちろんのこと、採用された後に必要なのは、なんといっても教育指導力といえます。
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実務家教員に必要な教育指導力は、企業での実務経験や論文の執筆だけでは培えない能力です。
生徒とは知識や経験の差、ジェネレーションギャップがあることも。実際の授業を通して、生徒の理解度をはかるスキルなどを身につけることが重要です。大学教員の求人も教育実績が重視されています。
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