大学の非常勤講師は稼げない？実際の給与や待遇について解説

大学講師の現状

大学の常勤講師と非常勤講師の人数推移を比較してみると、非常勤講師が年々増加していることが分かります。
2021年の大学教員数を表にまとめました。

現在、大学教員は非常勤講師が半数以上を占めています。大学は非常勤講師がいないと運営できないと言っても過言ではないでしょう。
出典元：文部科学省「学校基本調査」

非常勤講師は、複数の大学を掛け持ちしていることがほとんど。なぜなら、1つの大学だけでは収入が低く、生活ができないからです。
大学非常勤講師の平均年収は150～200万円と低いのが現状。高学歴にもかかわらず生活に困窮しており、「ワーキングプア」とも呼ばれて問題視されています。

大学非常勤講師が増えた背景

大学非常勤講師は、なぜこんなにも増加しているのでしょうか。
事の発端は、1990年代に国が打ち出した「大学院重点化策」です。大学院の進学者数が増加したことで、博士課程修了者の人数が大幅に増えました。
国は「大学院重点化対策」を打ち出した際、博士課程を大学や研究所などに努める学術研究者の養成がメインだと述べています。その上で、社会が高度化する中、博士課程修了者は民間企業からの需要も高まるだろうと推測しました。
博士課程修了者は、卒業後、実際にどのような状況にあるのでしょうか。
2021年博士課程修了者の卒業後の状況を、表にまとめました。

出典元：文部科学省「学校基本調査」

博士課程修了者の中で有期雇用、つまり非正規社員として働く人は22.9％にも及びます。
博士課程修了者の卒業後の選択肢は、豊富とはいえません。積極的に採用する民間企業は少ないのが現状です。また、大学常勤講師の枠は少ないまま。
このような状況から、博士課程を修了しても行き場のない人たちが多く存在しているのです。

大学常勤講師と非常勤講師の給与

大学の常勤講師の給与は、教える大学によって幅が広いことが特徴です。1,000万円を超える国立大学教授もいれば、地方の私立大学で400万円の教授も。
しかし大学・短大非常勤講師の年収は、大学にかかわらず150～200万円程度といわれています。常勤講師と同じコマ数、業務内容であっても給与の格差は大きいのです。
また、非常勤講師の持ち帰り残業についても、議論が交わされています。大学講師は授業準備やテスト作成・採点などの業務を家に持ち帰っています。
2021年には、教材作成に費やした時間外労働賃金を求めた女性が、大学側から賃金支払い義務はないと断られた事例もあります。大学非常勤講師は長時間労働を強いられながらも、低い年収で働き続けているのが現状です。

大学非常勤講師が稼げない理由

大学非常勤講師の年収は、なぜこんなにも低いのでしょうか。
ここからは、大学非常勤講師が稼げない具体的な理由について、主に3つ解説します。

• 1コマあたりの給与が低い

大学非常勤講師に支払われる授業1コマあたりの給与は、1～3万円が相場といわれています。週3コマの授業を担当しても、1ヶ月あたり12～36万円。時間外労働を含めた賃金と考えると、決して十分な金額とはいえません。
また、大学講師の募集要項には、具体的な給与が書いていないことがほとんど。大学教授のつてで採用されるケースも多く、採用までの間、給与面について質問できないことも多くあります。
給与形態が不明でも応募する人が多いのは、非常勤講師の募集は少ないからです、非常勤講師が抱える問題は改善されず、困難な状況が続いています。

• 長期休暇の間は給料が発生しない

春休み・夏休みなど、大学の長期休暇期間は授業がないため、給与が発生しません。
そのため、大学非常勤講師の年収は150～200万円が相場となっています。
他の職業と兼任している非常勤講師は、長期休暇期間で集中的にシフトを入れることが多いです。しかし、時期によって柔軟にシフト調整できる副業は稀なのです。

• 社会保険・厚生年金に加入できない

常勤講師であれば私学共済・公立学校共済に入れます。また、民間企業に勤めている場合は厚生年金・健康保険の加入が可能です。
しかし大学非常勤講師は勤務時間が短いので、社会保険や厚生年金に加入できないことがほとんど。
国民年金や国民健康保険は高額なので、自己負担すると手取りの収入はさらに少なくなります。

ほかにも、非常勤講師は学会の参加費用や教材費を自腹で払うことも多いです。大学から補助が出ないからです。年収が低いのに必要経費はかかるので、研究を続けようとすると、手元に残るお金はさらに少なくなります。
さらに、奨学金を借りて大学院に進学した場合は、返済義務もあります。しかし、非常勤講師の中には返済期限を過ぎても滞納せざるを得ない人も多く、利息が膨れ上がる事例もあるのです。

5年以上は働けない？大学非常勤講師の雇止め

2013年に労働契約法が改正されました。大学非常勤講師の雇止めに関係する内容は、以下の通りです。

有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換
有期労働契約が５年を超えて反復更新された場合（※１）は、労働者の申込みにより、
無期労働契約（※２）に転換させる仕組みを導入する。
引用元：厚生労働省「労働契約法が改正されました」2012年8月10日

労働契約法の改正により、5年以上非常勤講師として働くと、6年目からは常勤講師になれることになりました。
しかし、この「5年ルール」を回避するために、契約期間を5年以内として雇止めをする大学が出てきたのです。大学は、授業の曜日変更やコマ数を減らすなどの措置も取っており、立場の弱い非常勤講師が安心して働ける状況ではありません。
雇止めに遭った非常勤講師は多く、大学非常勤講師組合や弁護士を通して、無期転換を求める事例が増えています。非常勤講師の不安定な雇用状況は、今も改善されていません。

大学非常勤講師が安定した給与を得るためには？

非常勤講師の多くが、複数の大学で掛け持ちしています。しかし、実際はそれだけでは生活できる給料を稼ぐことができません。
ここからは、これから大学非常勤講師をめざす方に向けて、安定した給与を得る方法について3つ紹介します。

大学教授の募集に応募する

教授の募集に応募し続けるのが1つの方法です。
しかし教授採用数は減少する傾向にあり、採用も玄教授からの紹介が多いので狭き門となっています。
現在、非常勤講師の待遇改善を求める声が広がっています。今後、大学側は専任教授の待遇を低くする可能性もあるのです。常勤講師の待遇を、非常勤講師の不安定な雇用状況に合わせる形です。
そのため、運よく教授になれた場合でも、将来的に安定するかは不明といえるでしょう。

民間企業に転職する

民間企業に転職する方法もあります。継続的に安定収入が得られて、キャリアアップもめざせます。
デメリットは、就職活動が難航する可能性があることです。民間企業から大学講師・教授に採用されるケースはありますが、逆は少ないからです。社会人経験がないことがネックとなります。
また、フルタイム勤務だと時間が取れなくなるので、研究を続けたくてもあきらめる必要も出てきます。

副業と掛け持ちする

1番おすすめなのは、非常勤講師として働きながら、大学講師以外の副業と掛け持ちすることです。
将来的に常勤講師をめざす際、研究論文の作成が重要です。しかし、現状は収入を得るために複数の大学で非常勤講師を掛け持ちすると多忙になり、研究に費やす時間が少なくなります。副業で効率よく収入を得て、安定した高収入が得られれば、非常勤講師としての仕事や自分の研究を続けられます。
将来的に民間企業への転職をする際にも、大学講師以外の勤務経験はアピールポイントになります。

大学非常勤講師が副業を選ぶ際のポイント

大学非常勤講師として働きながら副業をする場合、どんな職業を選べばいいのでしょうか。
ここからは、副業選びのポイントについて3つ紹介します。

安定した収入が得られること

副業する1番大きな理由は、安定収入がほしいから。継続して収入が得られる方法を選びましょう。
非常勤講師と掛け持ちするので、副業にかける時間は短くなります。できるだけ高単価で働ける副業選びが重要です。

時間の融通が利くこと

非常勤講師の仕事は急に決まることが多いです。なぜなら、未経験の人よりも、非常勤講師を経験している人に声がかかることが多いから。急遽空きが出たり、ピンチヒッターとして他大学での授業を担当できることもあります。
時間の融通が利く仕事を副業に選んでおくと、チャンスを逃さずに済みますよ。

大学での研究や指導経験を活かせること

せっかく学んでいる研究内容を活かせる副業があるか、探してみるのはいかがでしょうか。大学の生徒だけでなく、あなたの専門知識を必要としている人はいるはずです。
研究や指導経験を活かした副業をしていると、転職活動をする際にも有利です。非常勤講師の指導経験と副業での経験がリンクしていると、自分の強みとしてアピールできるからです。

大学非常勤講師をめざす方におすすめのオンライン家庭教師

大学非常勤講師の方におすすめの副業は、オンライン家庭教師です。
オンライン家庭教師は、場所を選ばずにできる副業。大学の授業が終わった夜や、長期休暇の時期に働けます。特に長期休暇期間は、学習塾や家庭教師の需要が高まる時期です。ちょうど大学非常勤講師としての収入がなくなる時期に、集中して働けるので効率的です。
マナリンクでは、時給3,000円以上と高収入が得られます。生徒からの声を集めた評価制度があり、単価が上がっていくのもポイント。
指導科目を選べるので、自分の研究内容や得意科目で指導できます。大学での指導経験を活かして、家庭教師としても子どもたちの力になれる、やりがいのある仕事です。
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