発見学習にはどんな効果がある?方法や授業例を紹介
はじめに
教員採用試験でもお馴染みの教育理論のひとつに、教育心理学者ブルーナーが提唱した「発見学習」があります。発見学習とは何なのか、効果や発見学習の具体例を知ることで他の手法との違いと区別でき、授業の幅が広がります。
どのようにして発見学習を授業に取り入れ、効果を最大化することができるでしょうか?この記事では、発見学習の定義と効果、授業に取り入れる例を中心にご紹介します。
発見学習とは?
発見学習とは?
ブルーナーBruner,J.S.により提唱された教授・学習法である。
発見学習は,学習者が能動的にその知識の生成過程をたどることにより,知識を発見し学習する学習法である。学習者が自分で学習すべき知識を発見できるように教師が学習課題を提供するものであり,学習者が仮説を立ててそれを検証しながら法則や概念を発見していく学習法である。
引用元:発見学習/コトバンク
ブルーナーが提唱した発見学習の他に、問題解決学習、有意味受容学習、完全習得学習などの教育手法が挙げられます。
区別のために簡単に解説すると、以下のようになります。
- 問題解決学習
デューイが提唱。教師が用意した教材・授業進行に沿うのではなく、生徒にテーマを提示して問題・疑問を解決するため生徒自身が仮説を立て、議論・調査を行い自身で問題解決する過程を授業で行う。
- 有意味受容学習
有意味学習と受容学習と統合し、オーズベルが提唱。授業内容を生徒が理解する受容学習(⇔機械的学習)と、教師が提示した授業内容を生徒が受け入れる受容学習(⇔発見学習)を組み合わせたもの。
- 完全習得学習
ブルームが提唱。授業内容を習得できない所謂「落ちこぼれ」を防ぐため、生徒個人の適性に合った課題や学習方法を提示し、集団全体で一定以上の学力を目指す手法。
問題解決学習と発見学習の違いとは?
- 問題解決学習・・・生徒が問題を発見し、実験や調査等で問題解決能力を獲得する
- 発見学習・・・生徒の発見(気づき)によって知識や思考力を獲得する
参考元:問題解決学習/Wikipedia
理科教育/Wikipedia
完全習得学習/コトバンク
発見学習の過程
- 課題の把握:「なぜ?」という疑問を動機付けとする。
- 仮説の設定:既に知っていることに基づいて仮説を立てる。
- 仮説の検証:仮説から、論理的思考によってより洗練された仮説へと導いていく。
- 発展:検証によって発見した法則や概念を別の問題解決へと適用し解決していく。
参考元:発見学習/コトバンク
発見学習を正しく理解して授業に取り入れるためには、似たような他の手法と区別し、正しい過程を行う必要があります。
特に混同しやすい問題解決学習との違いを区別しないと、授業の達成効果が変わってしまうため、今一度発見学習と他の学習手法の違いやメリット・デメリットを見直しましょう。
発見学習の効果
発見学習で見込める効果
- 学習内容だけでなく、思考力を養える
- 応用力・活用力が身につく
- 能動的態度で問題解決へと動いて達成できる喜びから、意欲的になっていく
- 受動的に知識を獲得するよりも、発見学習によって得られた知識は保持しやすく、利用可能性も高まる
生徒が受け身となって知識を詰め込まれていく学習よりも、発見学習は生徒自らの発見によって能動的に活動する学習であるため、問題解決へのプロセスによる効果と知識保持の効果の両方が見込めます。
問題解決に対してのアプローチを重ねていき、生徒自身に成功体験を積ませることで次の学習にも意欲的に取り組むことが期待でき、回数を重ねるたびにより洗練されるのが発見学習の魅力です。
参考元:発見学習/コトバンク
発見学習のデメリット(問題点)と注意点
工夫できる点に関しては具体例があれば記述
特に授業計画に関しては綿密に組まないといけないことを併記し、次の見出しに繋げる
発見学習の問題点・注意点
- 生徒が能動的に知識を生成するため、時間がかかってしまう
- 生徒にある程度の仮説設定能力・検証能力が要求される
- 結果は生徒に委ねられてしまうため、望むような授業成果を挙げられるとは限らない
- 既に獲得した知識を元に仮説設定・検証するため、元になる知識がないと成立しない
参考元:発見学習/コトバンク
発見学習は効果や性質上生徒が主体となって進めていくため、発見学習の過程において重要な「仮説の設定」「仮説の検証」を生徒の知識や経験に委ねることになります。
発見学習をする分野の土台となる知識や知見がないと、生徒は「なぜ?」という疑問が浮かなばなかったり、仮説を立てることができません。
発見学習は仮説に基づいて進行していくため、仮説がずれていたり、検証の精度が低い場合は思うような授業成果が挙げられない、という問題点を把握して授業計画を立てましょう。
発見学習において教師ができる工夫とは?
- 学習対象に対して興味関心を抱かせる →自発的な「なぜ?」を大切にすることで、意欲的になる
- 学習した内容に基づくテーマを決める →ある程度の知識がないと発見学習が成立しないため
- 検証・発展の過程で新たな疑問が生まれやすいテーマを設定する →新たな発見学習へと繋げるために、発見学習の過程で他の疑問・仮説を促すテーマが望ましい
- 授業の振り返りにおいて、新たな疑問や問題解決の達成感を言語化させる →新たな疑問を次の発見学習へと繋げたり、問題解決や知識獲得に喜びを感じさせて意欲的にさせる
参考元:高等学校「課題発見・解決学習」実践事例集/広島県教育委員会
発見学習の効果を高め、メリットを最大化するためにも工夫が必要です。
発見学習を取り入れる場合は課題・テーマの設定と生徒の知識補完に重点を置き、念入りな授業準備をしましょう。
発見学習の授業計画の立て方
発見学習は時間がかかること、思うような授業成果を挙げられない可能性があることが注意点として挙げられるため、授業計画を念入りに立てる必要があります。
- 課題(テーマ)の設定
発見学習において最重要とも言えるのが課題(テーマ)の設定です。
生徒の発見を促すためには基礎となる知識が必要になるため、既に学習済みの単元とかかわりの深い課題を選びましょう。
また、生徒が疑問を持つポイントを予測しておくことが大切です。
- 授業時間の見通し、割り振り
発見学習に何コマ割けるのかを考えましょう。
発見学習で大切なのは「課題を見つける(発見する)」「仮説を立てる」「調査・検証する」「振り返る」過程です。
それぞれにどのくらいの時間を要するのかの見通しを立てましょう。
また、グループで割り振る場合は課題に対して全体をどのように区切れば新たな発見が生まれやすいのか見通しを立てておきましょう。
- 調査手法の見通し、確保
扱う課題や教科によって「問題解決・検証」段階の手法が変わってきます。
実験を行うのなら準備品や実験場所の確保、調べ学習なら図書室を使用する準備や、遠足・社会科見学に絡められそうなら下準備を忘れずに行いましょう。
- 振り返りシートの準備
振り返りシートを準備すると学習効果の向上が望めます。
発見学習の感想だけでなく、調査や結果を受けての新たな気付き・発見や、仮説に対してどのような結果が得られたのか、他の生徒の発表を踏まえて新たな気付きがあったのかをまとめられるようにしましょう。
発見学習の授業例
参考:https://www.jstage.jst.go.jp/article/newgeo1952/34/3/34_3_1/_pdf
- 国語
課題例:物語を読む
①【課題の設定】生徒の疑問・発見を出し合う
例)・なぜ作者はこのタイトルにしたのか?
- 作者はなぜこの題材を扱ったのか?
- 気になった台詞はあるか?
- 気になった表現はあるか?
- なぜ登場人物がこのような発言/行動をしたのか?
- 物語を通して作者が暗示/隠喩していることはないか?
②問題解決・検証
生徒をグループごとに分け、発見をまとめていく。
検証の中で得た発見や、根拠をまとめ、発表する。
③振り返り
生徒それぞれの自分の発見に対する反応・感想や、他のグループの意見、新たな発見をまとめる。
より発見をまとめやすくなるような振り返りシートを用意すると学習効果を上げやすい。
参考元:国語における「課題発見・解決学習」の実際/広島県
- 算数・数学
単元例:確率(中学1年生)
①課題を見つける
教科書やワークブックから取り扱う確率の問題を設定し、生徒に投げかける。
生徒が教わった解き方で問題を解き、正解を導き出すなかで、問題の条件を変えて再度生徒に疑問を投げかける。
例)・条件を変えても確率は変わらないのか?
・どのように条件を変えれば確率が変わるのか?
②課題設定
1を踏まえて生徒が課題を設定する。
実際に行う検証ごとにグループに分ける。
③課題の解決・検証
個人で検証を行う。くじや飴玉など、扱っている課題の問題例を検証できるように実物を用意し、グループに配布する。
物を使って検証する生徒、計算を行う生徒など、生徒の役割分担をはっきりさせる。
④発見の発表
検証の結果・発見をグループごとに発表する。
⑤振り返り
感想や新たな発見をまとめる。
課題に対して結果がより結びつくよう、確率を高めるためにはどのような組み合わせ・条件になるか等、発見学習の成果をよりはっきり生徒に認識させるような振り返りをすると効果が出やすい。
参考元:数学における「課題発見・解決学習」の実際/広島県
- 英語
課題:生徒の学年・習熟度に合った英文を読ませ、その内容について問題解決を行う
→小説や社会・環境問題や政治、伝記など肯定的・批判的に読める文章等
①発見する
英文を読み、生徒の「なぜ?」という疑問をまとめさせる。
例)・日本との文化の違い?
- 筆者はなぜそのように考えるのか?
- 文化的・時代的背景が影響しているか?
- 自分との意見の違いはないか?
②課題・仮説の設定
1の発見に対してそれぞれ課題を設定し、仮説を立てる
③課題解決・検証
設定した課題・仮説に対して調査を行う。
問題解決に対しての新たな発見や自分の意見をまとめる。
意見のまとめは生徒の習熟度や学年に応じ、日本語・英語どちらでまとめるかをあらかじめ設定しておく。
④発表する
生徒おのおのが設定した課題・仮説を発表する。
日本語・英語どちらで発表するのかあらかじめ設定しておく。
⑤振り返り
検証で知った事実・問題に対する発見をまとめる。
参考元:高等学校「課題発見・解決学習」実践事例集/広島県教育委員会
- 理科
課題例:環境問題(海面上昇、温暖化、酸性雨など)
→既に学習している自然現象と深くかかわっている環境問題を扱うようにする
①課題を見つける
生徒が学習済の単元と結びつきのある環境問題を例に出し、データを提示しながら「なぜこのような数値/結果になっているのか?」の問いかけをする。
②仮説を立てる
生徒に仮説を立てさせる。結果として起こっている環境問題の原因として考えられる現象やその他の要因がないかをできるだけ挙げさせる。
考えられる要因の中から検証するものを絞りこむ。
③問題解決・検証
2で立てた仮説の調査・実験・検証をする。
その際、しっかりと記録・データを残しておき、発表の際の根拠を示せるようにする。
④発表
立てた仮説に対してどのような結果が得られたのかを発表する。
検証の際に生じた新たな発見を問いかける。
⑤振り返り
感想や新たな発見についてまとめる。
他の生徒の発表を受けての意見・発見や、自身の仮説に対しての振り返りを書ける振り返りシートがあるとよい。
参考元:高等学校「課題発見・解決学習」実践事例集/広島県教育委員会
- 社会科
課題例:住んでいる市区町村について
①課題を設定する
生徒が住んでいる地域の特徴を書き出し、疑問をまとめていく。
例)・過疎化が進んでいるのはなぜか?
・特産物が多く穫れる/良く育つのはなぜか?
・城跡や地名等、どのような歴史と深いつながりがあるのか?
②仮説を立てる
1で生徒の興味のある課題を選び、仮説を立てる。
③調査・検証する
1・2で設定した課題・仮説に対して調査を行う。
社会科見学や遠足等の学校行事と結び付けて調査することも可能。
④発表する
調査内容をまとめて発表する。
⑤振り返り
自身の調査結果だけでなく、他の生徒の発表を聞いて新たに生じた発見はないかを問いかける。
参考元:問題解決能力を育てる社会科学習指導方法の研究/佐賀県教育センター
発見学習を授業で取り入れるには?
発見学習を授業で取り入れる場合、学校の方針や他クラスとのバランスを考える必要が出てきます。定期テストの日程や評価の関係上他クラスと進度の足並みを揃えることを踏まえると、どうしても数コマ分確保しないといけない発見学習を取り入れられない場合も考えられます。
また、発見学習には綿密な授業計画が要求されるため、発見学習のための準備時間を確保できないなどの問題も出てくることでしょう。
学校の教育計画/方針とそぐわない場合、新しい場で授業スタイルを追及することもできます。
学校以外で新たな授業スタイルを試す
オンライン家庭教師マナリンクでは、さまざまな授業スタイルを実践している先生方が在籍しています。
マナリンクで実際に反転授業を取り入れている原野先生にお話を伺いしました。
反転授業を取り入れるメリットとしては、まずは授業の質をより上げることができる点ですね。
(中略)
オンライン家庭教師の良さは、実際会えない距離の生徒さんとマッチングできる点ですね。
生徒さんと先生のマッチングプラットフォームとしての環境が整っているところで指導ができることが魅力だと思っています。
引用元:個人塾経営者だからこそオンライン家庭教師をする理由/マナリンクTeachers
原野先生のように、塾・学校ではなかなか取り入れづらいスタイルを、新しいスタイルの授業に共感して受講したい生徒とマッチングできるのが、オンライン家庭教師マナリンクの魅力です。
オンライン家庭教師マナリンクでは先生が自分自身の授業スタイル・強みをセルフプロデュースして打ち出せるため、相性の良い生徒とマッチングできるのです。
まとめ
発見授業は現在でも効果が見込まれて実践されている代表的な教育例です。過程をひとつずつ丁寧に踏んでいく必要があるため時間がかかりますが、成功すれば効果が見込め、生徒の意欲を駆り立てられます。発見授業を成功させるために、念入りな授業計画と課題設定を行い、上手に生徒を誘導するようにしましょう。
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