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【学力トップの中国教育】政策から読み解く中国がPISA1位になった理由

2021/8/17
【学力トップの中国教育】政策から読み解く中国がPISA1位になった理由

はじめに

世界各国の学力を測る手段として用いられているPISA(国際学力調査)において、近年は中国の成績に注目が集まっています。日本の学力低下が叫ばれ久しいですが、PISAを用いて学力到達度の高い国の教育理念やシステムを理解することで、日本の教育の良いところや、足りないものが見えてきます。

この記事では、急速にPISAの結果を伸ばしている中国の教育について、教育システムの観点や、家庭単位の教育事情に迫ります。

PISAの結果1位の中国


出典:OECD生徒の学習到達度調査(PISA)/国立教育政策研究所

2018年に実施されたPISAにおいて、中国は日本よりも全分野において好成績を残しており、PISAを受けた全ての国の中でも平均点1位をマークしました。上記グラフにてOECD各分野の平均点と比較してもわかる通り、決して日本のレベルが低いのではなく中国が圧倒的な平均点を取っています。

OECD加盟国の中では日本は数学的リテラシー分野で1位、科学的リテラシー分野で2位にランクインしていますが、OECDのくくりを取り払うと大きな点差で中国に離されてしまっており、中国の高い教育レベルをうかがうことができます。






出典:OECD生徒の学習到達度調査(PISA)/国立教育政策研究所
※2015年の中国の読解力データなし、2012年は上海のデータ

過去3年分のPISAデータにて、中国だけではなくシンガポールもトップクラスの成績を残しています。中国、シンガポールともに世界最高クラスの教育であることがわかります。

2018年の結果と比較してみると、中国が近年大きく成績を伸ばしているように見えます。日本はOECDで見ると、特に理系分野において安定した成績をキープしていますが、中国やシンガポールと比較すると大きく差をつけられているというのが現状です。

日本の課題として挙げられるのが読解力ですが、使用言語の差があるにしろ、中国・シンガポール共に各分野に偏りが見られません。

【一人っ子政策世代が親に】中国における教育の重要性

1979年から始まった中国の一人っ子政策が2015年に廃止されたことは記憶に新しいですが、中国の教育を語るうえで一人っ子は欠かせない存在です。国が一人っ子政策を国民に強いたことで、親の関心や教育費が一人っ子である子どもに集中するという結果になりました。

特に現在中国において成功者と呼ばれる人たちが、我が子をエリートにするためにハイクラスで高額な学校に入学させ、子どもがキャリアを獲得しやすいように注力するサイクルを作っています。

参考元:中国の新生児数が激減。背景の一因は高い教育費。バイリンガル幼稚園の年間費用は300万円超えも!(中島恵)/ Yahoo!ニュース

一人っ子政策に代わり、少子化を懸念して中国では2016年から「ふたりっ子政策」を開始されましたが、依然として中国の少子化は止まらず、期待した出生数には届いていません。そのため、一人っ子政策が廃止された現状においても、妊娠・出産を控えた層が複数の子どもに教育費を分散させることなく少数の子どもに集中しています。
参考元:中国「二人っ子」政策、効果乏しく 出生数減少止まらず/日本経済新聞

成績が将来を決める


なぜ中国はこれほどまでにPISAの成績が良いのでしょうか?中国の教育レベルがトップクラスの理由の一例として、各学校に設置されている「英才クラス」、そして上海等の大都市に設立されている「教育重点校」と呼ばれるエリート養成校の存在が挙げられます。
学区で区切り均一的な教育を行う日本とは違い、中国では成績と経済力で進学できる学校が異なるため、より生徒の適性を重視し個々に最適な教育を施せるシステムになっているのです。

また、中国は日本以上の超学歴社会であり、エリートになるためにはハイレベルな大卒であることが求められ、早期からの競争が始まる15歳前後にPISAの時期が被った結果PISAの成績が良い、とも考えられています。

もちろん、中国は人口も多く、日本よりも国民の格差が激しいため、国民全員がしっかりとした教育を受けて競争社会に飛び込んでいるわけではありません。

しかし一方で、現在の中国では富裕層同士の競争が激しく巨額を投じて子どもに投資する親だけではなく、貧困層や田舎の出の若者が貧困を脱出するべく名門大学を目指す人も大勢いるのです。中国特有の社会構造が学力向上に繋がっている側面もあることがわかります。

参考元:【上海】「PISA」でダントツ世界1位…上海の「学力」はなぜ伸びたのか/Globaledu
超学歴社会の中国で「名門学区」の不動産価格が高騰するワケ/CITIC PRESS Japan

中国教育の特徴【日本との違いも解説】

中国と日本の教育の違い

  • 教育制度/区分わけが異なる
  • 高校から進路が分かれる
  • 授業時間が長い
  • 授業科目が異なる



では具体的に、中国教育は日本の教育と何が違うのでしょうか?
ひとつずつ見ていきましょう。

教育制度/区分分けが異なる

中国の学校教育制度は日本と同じ6-3-3-4年制です。しかし、基本的に3学期制を取る日本に対し、中国の学校の場合は2学期制を採用しています。

日本のように全国民に対する無償化は進んでいないため、比較的裕福な子どもが学校に通っているという地域も存在しており、教育格差が生まれる原因にもなっています。

高校から進路が分かれる


中国における高校からの分岐

  • 普通高級中学
  • 中等専門学校
  • 職業学校
  • 技術労働者学校



中国では、高校から「普通高級中学」「中等専門学校」「職業中学」「技術労働者学校」に進学が分かれます。半数以上の子どもが入学する「普通高級中学」は日本で言うところの普通高校であり、大学進学を目指す学校です。

「中等専門学校」は普通中等専業学校と呼ばれ、就職を目標に商業や情報システムや会計を勉強するので日本の産業に特化した高校と近いイメージです。

「職業学校」は中等専門学校と同じように就職を目標にした学校ですが、専攻の他に普通高級中学で学ぶような基礎科目も学びます。「技術労働者学校」は他の学校と管轄が違い、機械、電気、IT、整備、調理師や美容等を1~5年にかけて修了していく仕組みです。

以上のように細分化された教育システムは以前こちらのマナリンクTeachers「フィンランド教育の特徴とは?世界一といわれる理由からデメリットまで解説」にも紹介されているフィンランドの教育と似通っています。

中国と同様に以前PISAで好成績を収めていたフィンランドでも、高校に進学する場合進学に特化した普通高校と就職に特化した職業高校に分けられ、より生徒の適性を活かせる教育制度になっているのです。

日本にも産業専門の高校はありますが、中国やフィンランドのように厳密に分けられてはおらず、専門科目と並行して普通科目を学習します。世界トップレベルの教育制度を持つ国は、生徒の特性や進路希望、得手不得手を織り込んで昇華させるような仕組みになっています。

参考元:中国の教育の特徴は?PISA2018で世界第1位の制度、日本との違いを解説/Education Career
中国の中専卒はどんな学歴か?職高、中専、技工など分類もある/ツーチャイナ

授業時間が長い

中国の平均的な学校の1日の授業時間は7時間ですが、あくまで非教育重点校であっても普通高校である以上は大学進学を目標にしており、8~10時間ほど課外を含めた授業を行う学校があります。また、重点校においても長時間の授業が実施されており、世界的にも授業時間が長い傾向です。
参考元:中国における「重点校政策」の教育効果に関する実証的研究-帳春蘭(九州大学)

前述のフィンランド教育と比較すると授業時間という点においては相違があり、フィンランドは短い授業時間で高い学習成果を挙げることで有名です。
中国・フィンランドを対比すると、授業時間の長さと学習成果の相関性がないことがわかります。必ずしも全部の学校で長時間授業が行われているのではなく、中国では学力ランクの低い方が授業時間が長いことから生徒に学力に合わせて良い大学に進学するためのサポートを行っています。

授業科目が異なる

中国と日本では授業科目がやや異なります。日本で学ぶ授業科目に加え、小学校では情報・IT技術の授業があり時代を先駆けていると言えるでしょう。

また、中学校では情報・ITの授業に加えて理科の授業が物理、化学、生物に細分化されており、早期から専門的な知識を学んでいます。

日本でも小学校に英語が導入されましたが、中国ではいち早く取り入れているため進学や就職に向けたキャリア形成を意識したカリキュラムになっています。学歴社会の中国では日本よりもより実践的な授業を取り入れ、大学進学だけではなく就職後を見据えて早期の教育に組み込んでいます。
もちろん、高校の入学先によっては即戦力として就職できるように普通科目を学習せず、より専門に特化した科目を学習することになります。

まとめ


中国教育が高水準である理由として、「一人っ子政策での潤沢な教育資金」「競争社会」「細分化された学校制度」が挙げられることがわかりました。日本も各国のPISAの結果を見ると世界でも上位ですが、中国の教育制度と比較すると日本よりも革新的な部分も多く、取り入れるのに難しいものも多々あります。

また、中国の場合は高度な教育をするためにも多額のお金がかかるため、個人単位で中国教育に近づけようとしても必ずしも全体の現状がより良くなるとは限りません。しかし、長い目で見て中国やフィンランドのような良質な教育を制度の側面から改革していけば、日本の教育も徐々に変化が出てくることでしょう。

マナリンクTeachersでは、フィンランドやシンガポールなど海外の教育政策や事例をご紹介しています。
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