ストレスを抱えながら働いている大学教員の方のための解決策をパターン別に解説
はじめに
大学教員は世間的に、好きな研究をして高収入を得られる良い仕事だというイメージが強いかもしれません。確かにメリットはありますが、その反面、仕事が辛くストレスを抱えながら働いている教員がいるのも事実です。今回は、その状況を少しでも改善できるよう解決案をご紹介します。
大学教員は楽しい⁉そのメリットとは?
大学教員であることの最大のメリットは、利益を求める企業と違い自由に研究ができる点にあります。しかも、基本的に大学から研究費まで出してもらえます。パソコン、プリンター、ハードディスク、iPad、書籍などを揃えることが可能です。
その自由度の高さは、他の職業にはないものです。講義や会議がある時は当然それらをこなす必要がありますが、それ以外の時は、上司から指示されたことをこなす会社員とは違い、自由にスケジュールを組めます。
それ相応の立場になれば、1人1つずつ研究室が用意される点も魅力です。基本的に研究に関するものを置いたり、授業準備をしたり、たずねてきた学生と雑談したり、自分がしたいことに没頭できます。自分のペースがうまくキープできれば、楽しいと感じられます。
やることさえきっちりこなせば、服装などについてとやかく言う人もいません。茶髪にノーネクタイでも、問題なしです。
副業に関してもある程度許されています。他大学の非常勤講師・講演活動・本の執筆・テレビ出演など多方面で活躍されている大学教員の方がたくさんいらっしゃいます。本業より副業の方で多く稼ぐパターンもあります。
自由度の高さ以外に、年収の高さも利点の1つだと考えられます。職業別ランキングにおいて、大学教授は3位にランクインしています。しかしながら教授になるまでには、学部を卒業し、修士課程、博士課程を修了し、さらには講師→准教授→教授というステップを踏む必要があります。これらを考慮に入れると、さほど高い年収だと思わないという声があるのも事実です。
また、大学教員は社会的地位が高く、一目置かれる存在であるというものメリットです。そこに、女性蔑視の考えはありません。男女平等が叫ばれるようになって久しいですが、職種によってはまだまだ男尊女卑の考えがはびこっているものもあります。大学職員の場合はそれがなく、これは働く女性にとって大きな利点です。
ちなみに、女性大学教授の年収ランキングは2位で、男女合わせたものと大差がありません。むしろ高く、この結果が大学教員の世界において、男女平等の考えが根付いていることを立証しています。
参考元:令和元年度の職業別平均年収ランキング【最新2020年】|平均年収.jp (heikinnenshu.jp)
大学教員のデメリットとは?仕事が辛い理由と解決策
研究費を負担することがある
先に、研究費は大学が出してくれると書きましたが、それだけでは足らない場合も中にはあります。
国立大学の場合、学生の教育費兼研究費は、教員一人当たり年間50万円もないところがほとんどです。ここには、学生の実習などに使う経費も全て含まれています。細かいところで言えば、研究室の電話代、コピー代も含まれます。とてもじゃないけれど、支給される金額だけで満足な研究はできません。
さらに学会に所属して年に1回の定例集会に参加するとなると、地方大学の場合旅費もかかるので、10万円弱は必要になります。学生を連れていくと、さらに旅費代がプラスされます。自分の研究成果をそれぞれの分野に合った複数の学会で発表することを考えると、そういった費用だけで50万円はくだらない計算になります。結果、教員が足らない分の研究費を負担することがあります。
- 解決策
外部からの研究費は、公的資金(競争的資金)と、企業などとの共同研究費や奨学寄附金などに分かれます。主に狙うのは前者です。そのうち科学研究費補助金(科研費)のような、目的となるテーマがあらかじめ決まっておらず、応募しやすい制度に的をしぼって申し込むと良いでしょう。もらえる期間に延長はないので、また次の研究費のために応募します。このサイクルがうまく回るように努めます。この方法でなんとかやれてはいけますが、赤字にならないように、一年中資金のことを考える必要があります。
参考元:日本の大学教員の研究費はどこから来ているの? その仕組みを解説します。 | 山口大学共同獣医学部臨床病理学分野 (mizutakuvet.com)
研究にのめり込みすぎで精神的に参る
早く結果を出そうと研究にのめり込みすぎて、精神的に参ってしまう人がいます。
- 解決策
研究を続ける上で、情熱を持ち続けることは必要不可欠です。ただ、研究結果は必ずしも頑張りに比例するものではありません。10年の歳月を要する場合もあります。最初から研究はその性質上、長くなるものだと覚悟し、我慢強く続けることが大切です。
事務的な業務がストレス
大学教授のおもな仕事は、「授業」「研究」「会議」です。前の2つは納得できますが、「会議」や事務的な仕事を余計な仕事と捉えてしまうと、大学運営のための会議などに嫌気がさし、その分ストレスがたまることがあります。
- 解決策
考え方を変えるのが一番です。雑事も、無駄な作業ではなく、仕事のうちだと捉えることができれば、気持ちが幾分か楽になります。実際、授業を提供したり研究を行うベースとなる学校は、雑事によって機能しています。
長時間勤務が辛い
これが大学教授のある1日のスケジュールです。
このスケジュールに、さらに事務的な作業が立て込むと、授業準備や研究に費やす時間がなくなります。それらをこなす時間に充てるため、早朝から勤務したり、夜遅くまで研究室に残って作業をすることがあります。
- 解決策
論文の進行状態によって、あるいは研究が今どの段階に差し掛かっているかによって、帰る時間が遅くなる場合もあります。しかしながら、それを毎日のルーティーンにしてしまわないことが大切です。事務的な仕事が入ってきたとしても、早く切り上げる日、しっかり仕事をする日のメリハリをつけて、身体と心に負担がかからないようにしましょう。
生徒との人間関係、教師同士の人間関係に疲れる
どの職場においても、煩わしい人間関係の問題はあります。それは対教員のみならず、対生徒でも起こり得ます。
- 解決策
同僚で気に入らない人がいても、研究室にこもってしまえば、顔を合わせることはありません。教授会で顔を合わせることは避けられませんが、席を離れればさほど気にはならないでしょう。合わない人がいるのはどの世界においても当然のことだと割り切り、距離を置くのが一番です。
また、ポジションが上の教員との人間関係に悩むこともあるかもしれません。しかしながらご存知の通り、職階として、助教→講師→准教授→教授というランクが存在し、多少気を遣うことはあるものの、会社のような絶対的な上下関係とは全く種類が違います。
また、その職階は、ある程度実力に応じて決められます。研究によって実力が認められれば、若くして教授になることもあります。本当の実力によって決められた職階だと思えば、相手を尊重することもできるのではないでしょうか。
生徒に対しては、お客さんだと割り切りましょう。生徒を指導することは、教員のメインとなる仕事です。プロ意識を持ち、教員として指導することに集中すると、余計なことが気にならなくなります。
大学を移るという選択
在籍している大学において、問題が多いなら、大学を移るのも選択肢の1つです。
その際まず評価されるのは、研究実績です。論文等の中身も評価されますが、査読論文や著書の数に重きが置かれることも多いです。もちろん、指導経験も問われます。大学での指導経験がまとまった年数あることは、プラスとして評価されるでしょう。
一般企業ではあまり見られないかもしれませんが、大学教員の場合、他の研究機関へ移籍することは普通のことです。最初の就職よりハードルが低いので、挑戦してみる価値はあります。
大学教員を思い切ってやめる
大学教員の転職活動
- どんな道があるか
高学歴で専門分野に明るく、教えることが上手で、頭の回転が早い大学教員は、社会的にとても評価が高いです。特殊な資格を持っていたり、指導歴が長いと、さらに評価が上がります。その指導力を活かして学習塾の講師という道を選んでもいいですし、教材制作関連の企業に勤めるというのもアリです。理系なら、開発の分野に勤めることも可能です。
ただ先述した通り、大学教員というのは、社会的地位が高く、年収も他の職種と比べて高い水準を保っています。一度離れるとまたその地位を取り戻すことはできないことを覚悟し、転職を考える際は、本当に転職してもよいかよく考えてから行動するようにしてください。
大学教員の履歴書の書き方
集中力、人に教えるスキル、コミュニケーションスキルに関して、大学教員は他業種の人よりも特に秀でています。転職する場合、応募先の会社が何を求めているのかよく調べ、大学教員として培ったどのスキルをより発揮できるか見極めたうえで、履歴書に自分のアピールポイントを書くようにしましょう。
大学教員を辞めて、本気で転職する方法を模索中の方は、次の記事を参考になさってください。
【大学教員を辞めたい方必見】すぐ実践できる転職を成功させるコツ | マナリンクTeachers (manalink.jp)
まとめ
どんな職業もそうであるように、大学教員の仕事にもメリットと同時にデメリットが存在します。今回は、ストレスを抱えながら働いている人が直面している問題をいくつかピックアップし、その解決法を提案しました。研究費に関する悩み、長時間勤務に対する悩み、さらには人間関係と、幅広く大学職員の方が陥りやすい問題を取り上げてみました。
また、その問題が根強いようであれば、大学を移る、あるいは大学教員自体を思い切って辞めるという選択肢もご紹介しています。ぜひ参考になさってください。ストレスフルな今の状況が少しでも和らぎ、楽しく前向きな毎日が送れるようお祈りしています。
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