常勤講師職を辞めたい方必見!今後の進路を決める手がかりをご紹介
はじめに
出典元:資料3:非正規教員の任用状況について (mext.go.jp)
グラフからわかるように、常勤講師の数は年々増加傾向にあります。全職員の中に常勤講師の割合が増えれば増えるほど、本来なら正規雇用の教員に任すべき仕事が常勤講師に任せざるを得なくなり、さらに一つ一つの重みが増します。担任を持つのはもちろん、部活動の顧問なども担当するケースが多いです。
その中で、様々な理由から常勤講師職を辞めたいと思う先生が出てきます。今回は、その理由と退職方法、その後すべきこと等についてご説明します。
講師1年目の壁について
講師1年目の壁とは?
全てが未知の世界でどうしていいかわからないまま、やるべきことがどんどん増えていき、それが積み上がり壁となります。また、児童・生徒の気持ちを上手く汲み取ることができず、子どもとの間に壁ができます。それがクレームとなり、子どもの壁の後ろに、親の壁もできてしまいます。それらが1年目の壁と言うべきものです。
なぜ講師1年目で辞めたいと思うのか?
講師1年目だからといって容赦はありません。他企業のように新人研修もなく、右も左もわからない状態で、子どもたちの前に立ち授業を強いられます。上手くいかないことに悲観している間もなく、部活動や雑務などを含めやるべきことがどんどん壁のごとく講師の前に立ちはだかります。そちらに時間と労力を奪われ、満足いく授業準備ができず、また自分の授業に自信が持てないという悪循環に陥ります。
そんな状況であるため自分のことにいっぱいいっぱいで、肝心の子どもへの対応が手薄になり、真面目な人ほど自分を責め、思い描いていた教師像とかけ離れている自分に辟易し、1年目でギブアップとなる場合があります。
回避する方法
自分1人で抱え込んでいても、解決の糸口は掴めません。相談しやすい相手を選んで、話を聞いてもらいましょう。指導役の先生に相談するのがベストですが、どうしても難しいなら、最近同じように1年目を経験した歳の近い先生に悩みを相談すると良いでしょう。
他の先生方も、仕事におわれ、周りに気を配る余裕がなくなっています。声をかけてもらうのを待つのではなく、自分から相談してみて下さい。教師は基本的に教えることが苦ではないので、声さえかければ親切に教えてもらえることが多いです。自分1人では思いつかなかった考え方の転換、取り組みのヒントをもらえ、現状を打破できるきっかけを掴めるかもしれません。
(1年目でなくても)常勤講師を辞めたくなる理由
常勤講師は、休職できない
常勤講師には、正規採用教員と同様、年次有給休暇(年休)が与えられます。一般的な付与日数は、勤務期間3ヵ月につき5日間となっています。年休は権利ですので、都合に合わせて取得可能ですが、病休や育休は取れません。よって、万一、病気のため長期入院をする場合、あるいは出産を控え休暇が必要になったとき、休むという選択肢はなく、契約途中でもやめざるを得ません。
常勤講師は不安定
常勤講師は、勤務ができない正規採用の教員の代わりとして採用されます。勤務ができない理由としては、産休、育休、病休などが考えられます。正規教員の代わりに採用されるので、仕事内容は基本的に正規教員とかわりません。
激務であるのに、継続して採用してもらえる保障がないのが、常勤講師の辛いところです。基本的には1年契約ですが、場合によっては、「正規採用の教員が復帰するから〇月で退職で」といった恐ろしいことを言われる可能性も、皆無ではありません。
最近は、正規教員の代わりのみならず、児童生徒の減少に対応すべく新規採用者を減らし、常勤講師を積極的に採用するという動きもあります。または、教諭として採用できるだけの財源がその自治体にないから、常勤講師を採用するというケースもあるようです。いずれにせよ、常勤講師という職は不安定であることには変わりありません。常勤講師というのは、便利屋扱いされることが多いのです。
実際、次年度どの学校勤務になるのか、はたまた仕事自体あるのかは、教諭の配置が決定した後ぎりぎりにならないと、教育委員会から打診がこないことがものがたっています。
教員に比べて圧倒的に給料が安い
常勤講師の仕事は、正規教員と変わりありません。クラス運営、部活動の顧問、分掌業務など授業以外の校務や雑務も当然あります。それなのに、正規教員に比べると、常勤講師の給料は圧倒的に少ないです。
正規教員の給与が年700万円程度なのに対し、非正規では最高でも年400万円未満と少ない。
引用元:公立小中に4万人いる常勤講師の差別待遇 仕事は同じでも年収は400万未満 | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)
独身なら食べていけますが、結婚して家庭を持つことを考えると、厳しいでしょう。
常勤講師の退職方法
退職方法【パターン別に解説】
- 1年で辞める
契約はほとんどの場合1年契約なので、もともと同じ学校に継続して勤務できる確約は当然ありません。ですが、その可能性が全くないわけでもないですし、お世話になった勤務先の校長先生には、正直に来年は講師登録をしない旨を伝えましょう。
あとは、自治体によって違いますが、講師を希望する場合に参加する、各教育委員会主催の更新手続きを兼ねた講師登録説明会に、今回は参加せず見送ればOKです。その場合、校長先生から教育委員会に話がいくこともありますが、講師の数が足らない場合、教育委員会から直接電話がかかってくることもあります。意志が固いなら、きちんと自分の言葉で断りましょう。
- 年度途中で辞める
年度途中の退職は、雇用契約途中での退職となり、本来なら契約違反になります。期間雇用の場合は、もめるのを避けるために「やむをえない事由」が必要です。
女性であれば、「妊娠して悪阻がひどく、授業をすることが難しくなった」などが理由として考えられます。男女問わず「うつ病を発症してしまい、生徒の前に立つことすらできなくなった」というケースもあるでしょう。
こういった事情を、遅くとも1ヵ月前までに管理職(教務主任、教頭、校長)に相談します。そうすると、学校から教育委員会に話が行き、後任の先生を探してもらえます。後任の先生が見つかったら、引継ぎを丁寧に行い、後任の先生のみならず児童・生徒にも迷惑がかからないようにしましょう。
あわせて、事務的な手続きを行います。退職する際には、必ず「離職証明」を取ってください。離職証明を受け取ったら、次の仕事を探すことを前提に失業保険を受け取るのか、配偶者や親の扶養に入った方がいいのか決め、それぞれに応じた手続きを行います。
常勤講師をやめた後すべきこと
妊娠が辞める原因となる場合は、出産・育児を控えているのですから、ゆっくり体調を整えることに専念してください。育児が落ち着いたら、非常勤講師として復帰するのも選択肢の1つです。
精神的に参ってしまい退職という道を選んだ方は、もう一度なぜそのような事態に陥ったのか、整理することをおすすめします。「仕事量が多すぎて、寝るためだけに家に帰ってくる生活に嫌気がさした。さらに部活で土日がつぶれ、自分の時間が全くとれなかった。」「こちらの言うことを全く聞かない生徒、理不尽なことを言う親の対応、または、職員室内の人間関係に疲れた。」「給料が安く、将来的に不安。」「自分の頑張りが、評価→給料につながらないことに不満があった。」など、思いつくまま、退職に至った理由を書き出します。すると、転職活動をする際の条件が決まるはずです。
子どもに教えることに嫌気がさしたわけではないなら、学習塾の講師という道もアリです。また、教材作成に携わる仕事も良いですね。教育業界から離れたい方には、営業やセールス、事務の仕事などが人気です。
自分では自分の市場価値がわからないという方は、転職エージェントに登録するのも1つの手です。ただし、転職エージェントを利用するのは、企業側にとって一番コストのかかる方法だと言えます。受かりやすさを重視するなら、ハローワークや自社サイトの公募を利用すると良いでしょう。どういったルートを使って転職するにしても、常勤講師を辞めざるを得なかった原因をクリアできる職を見つけてください。
実際に教員をやめて、転職した先生のインタビュー記事をご紹介します。ぜひ、参考になさってください。
教員から転職!経験やスキルを活かし新天地で縛られない自由な働き方を実現! | マナリンクTeachers (manalink.jp)
辞めない選択の場合の最善の方法
上述したことを考慮に入れても、講師を続けていく気があるなら、教員採用試験の勉強に真剣に取り組み、正規採用を目指してください。これがやはり、最善の方法だと言えるでしょう。先に述べた通り、常勤講師と正規採用の教員の仕事はかわりません。それなのに給料に大きな差があります。正規教員となれば、給料の不満は解決できます。
または、教師の仕事は好きだけれど、今の職場が合わないというならば、例えば「小学校から特別支援学校へ」などと異動することも可能です。ちょうど任用期間がかわるタイミングを見計らって、その前に校長先生に希望を伝えておきましょう。
まとめ
常勤講師の仕事は、正規採用の教員と変わりないのに、給料に大きな差があります。また、正規職員には当たり前のように与えられている長期休暇が与えられない、基本的に1年契約なので生活が不安定、といったデメリットもあります。辞めたくなるのも当然のことです。今回は、常勤講師の退職方法についてご紹介しました。また、常勤講師を辞めた後にすべきことにも言及しています。なぜ常勤講師を辞職するに至ったのか、自分自身の答えを洗い出し、転職の際の参考にされることをおすすめします。
辛いながらも、結果的にやはり常勤講師を続ける決断をするなら、働き方を変えると良いでしょう。すべてパーフェクトであることを求めず、幾分か自分の時間をつくり、教員採用試験の勉強に励んでください。腹をくくって目標を据え置くことで、辛いことも乗り越えられる原動力となります。
常勤講師を辞めるにしても、続けるにしても、後悔がないように自分とよく向き合って決断してください。
免責事項
こちらの情報は執筆段階でのリサーチ・状況において執筆されたものであり、随時内容のメンテナンスを行っておりますが、 現時点での正確性を保証するものではございませんのでご了承いただけますと幸いです。